膝が痛い!「半月板損傷とは!?」総論
膝が痛いとなったらみなさん何が原因となるか知っていますか?
膝の痛みの原因は様々ありますがその中でも半月板損傷による膝の痛みというのは若年から中年者にとっては多くを占める原因です。
今回はそんな半月板損傷に関して解説していこうと思います。
半月板とは?
半月板とは膝の中に存在するクッションのようなものになります。
膝を上から眺めた図になります。
このような形でC型に半月板は存在しております。
そしてこの半月板は上図のようにクッションの働きをしており上から加わる力を分散させて
骨や軟骨を守ってくれています。
さらにこの半月板はクッションとしてだけでなく膝の曲げ伸ばしをする際にも動きますので半月板を損傷した場合には膝の曲げ伸ばしでも痛みが出ることがあります。
半月板損傷 身体所見
半月板が何かの衝撃によって破れてしまうことを半月板損傷と言います。
この半月板損傷になった時にどんな症状が体に出るのかまとめていきます。
半月板損傷を見分けるには有名なテストとして「Mcmurray test」と「Thessaly test」が存在します。
また実はそれだけではなく、「関節裂隙の圧痛」というのもかなり重要な所見になってきます。
この関節裂隙の圧痛があれば上記2つのテストと同じくらいの確率で半月板損傷があるといったデータが示されています。
関節裂隙の圧痛があれば
半月板損傷の可能性がある
半月板損傷の画像検査
半月板損傷を診断するためにはMRIが必要となってきます。
MRIは磁力を用いた検査でレントゲン、CTなどと違って放射線を浴びることはありません。
MRIでは骨だけでなく軟部組織、半月板、筋肉などを観察することができます。
そのため関節裂隙の圧痛がある場合はMRIを取ることが推奨されます。
半月板の損傷形態
半月板は破れ方つまり損傷形態によって治療方法や予後も様々です。
ここでは一度その損傷形態ごとに解説していきます。
半月板縦断裂
縦断裂は上図のように縦に断裂が入ります。
一般的にスポーツ選手によくある断裂の仕方になります。この断裂の場合は
一般的には大きく切れている場合で10mm以上の場合は手術加療の適応となります。
しかし、リハビリなどをしていて奏功しないや運動を続けながらする場合は進行して
下記のバケツ柄断裂になる可能性があるので早期の手術を行うこともある。
この図のように糸を断裂部分に対して垂直にかけることによって修復させます。
半月板バケツ柄断裂
縦断裂からこのような形でバケツの柄のようにひっくり返り膝に挟まり込んでしまう場合があります。
そのため挟まりこんでした待った場合は激痛とともに膝が全く動かせなくなります。
この状態で昔の整形外科医は麻酔薬を膝の中に入れて無理やり動かしてロッキングを解除すると言った方法を取ることがありますが、これをやることで引っかかった半月板が破れてしまうことや変性がひどくなってしまうことなどが懸念されるため現在は緊急で関節鏡で手術をしてロッキングを解除する方法が推奨されています。
(もし膝がロッキングしてしまった際に無理やり外されそうになったら本当に注意してください、まだそういう整形外科医がいるのは事実です。)
半月板 水平断裂 (内部変性)
この断裂は別名内部変性ともいい、半月板の中に水平に亀裂が入るもしくは変性して傷んでしま右ことで起こります。
年齢的に40代後半から内部変性が起こってくる人も多いのが現状です。
この断裂の場合は多くが保存加療で経過良好な場合があります。
一般的に何かの衝撃で起こったものというよりは徐々に悪くなってきたもので以前までは手術による成績はあまりよくないと言われておりましたが近年はこのFiblin clot という血餅(再生因子を含んだ血液の塊を用いた縫合などが良好な成績を収めることができると報告されています。
半月板 横断裂
横断裂は少しだけの断裂なら痛みだけで問題ないが、これが辺縁部まで繋がってしまうような場合は必ず手術が必要になります。
手術方法も縦断裂と比べると難しく普通の縫合方法ではチーズカットしてしまうためタイグリップスーチャート、ハッシュタグスーチャーといった特殊な縫合方法で手術しなければすぐに再発してしまいます。
横断裂の場合はこのように特殊な方法で丈夫にぬっても再断裂する確率が高いためリハビリや体重をかける時期を通常の手術より遅らせることが一般的です。
内側半月板後根断裂
内側半月板後根断裂とは2010年代に新たに提唱され始めた断裂形態でありこの断裂形態が半月板の逸脱の原因であり、変形性膝関節症の始まりと言われている
この内側半月板後根断裂は放っておいたら半月板が外に逸脱してしまい、半月板がクッションとしての役割を果たせなくなってしまいます。
そうなると徐々に軟骨が直接ぶつかりあい削れてしまい変形性膝関節症になると言われています。
受傷する時には「この一歩」となるきっかけがあります。
例えば階段を降りる時、犬の散歩をしていてふと引っ張られた時などが典型的な一歩となります。
そこから1ヶ月から2ヶ月程度で痛みは治ってくると言われていますが、3ヶ月から半年経つと半月板の逸脱が始まると言われています。
半月板後根を治すにも縫い合わせる縫い代がありませんそのため特殊な手術方法をします。
切れた断端に糸をかけます
すねの骨に穴を開けて元々内側半月板の後根が付いてた場所に穴をつなげます。
引っ掛けた糸を穴に通してきて固定することで破れた場所を修復します。
半月板縫合術後のリハビリテーション
:基本戦略と注意点
半月板縫合術後のリハビリテーションは、術後の回復において非常に重要です。適切なリハビリプロトコルを理解し、術後の治癒過程を尊重しながらリハビリを進めることが、患者の早期回復や再損傷の予防に繋がります。今回は、半月板縫合術後のリハビリにおける基本戦略と注意点について解説します。
半月板縫合術後のリハビリテーションの基本戦略
術後のリハビリテーションの目的は、「半月板縫合部の治癒を阻害しない」ことと
「過度な負荷をかけずに適切な動作を獲得する」ことです。
半月板の治癒は3か月を境に大きく進行しますが、術後早期から3か月までは縫合部の力学的強度が低く、過度な負荷がかかると再損傷のリスクが高まります。
また、荷重位での膝屈伸運動は非荷重位よりも半月板に加わる圧力が大きいため、
スクワットなどの荷重位トレーニングは術後3か月以降に開始することが推奨されます。
術後リハビリテーションのプロトコル
手術直後から1週間までのリハビリ
- 炎症の緩和: 術後の膝腫脹は大腿四頭筋の筋萎縮につながるため、早期の腫脹管理が重要です。アイシングや弾性包帯を使用し、炎症を抑えることを目指します。
- 膝伸展の可動域練習: 膝の完全伸展を早期に獲得することが、術後の機能回復にとって重要です。背臥位でのリラックスした状態でのストレッチや、徒手的な筋緊張のリリースを行います。
大腿四頭筋の筋力強化
術後早期から大腿四頭筋(特に内側広筋)の萎縮を防ぐために、「大腿四頭筋セッティング」が重要です。神経筋電気刺激(NMES)を併用することで、筋収縮をより効率的に引き出すことが可能です。
- 方法: 膝下にタオルを置き、押しつぶすように力を入れます。この際、内側広筋の筋収縮を確認しながら、膝蓋骨を挙上させることを意識します。
半月板縫合部に過度なストレスをかけないための注意点
関節可動域の制限
膝の深屈曲や過伸展は、半月板の変位を増大させるため、リハビリ中は特に注意が必要です。荷重位での膝屈伸運動(スクワットなど)は、3か月以降に開始し、膝屈曲90°以上での負荷は腫脹の状況を確認しながら段階的に進めることが推奨されます。
下肢アライメントの確認
不良アライメント(特に下腿外旋位)は、膝屈伸運動時に内側半月板に過度な負荷をかける原因となります。適切な下肢アライメントを維持することが、再損傷を防ぐための重要なポイントです。
半月板の荷重伝達機能
荷重が膝に加わると、半月板は円周方向に引っ張られる力(フープストレス)を受けます。このストレスは、特に膝屈曲90°以上で顕著になるため、リハビリ中は圧迫ストレスを適切に管理することが求められます。
回旋運動のリスク管理
膝の回旋運動(外旋・内旋)は、半月板に剪断ストレスを加えるため、リハビリ初期では過度な回旋を避け、水平面での姿勢制御機能を向上させることが重要です。